饗宴外交の舞台裏 (56)

米大統領夫人はこんな趣向を凝らした

執筆者:西川恵 2002年9月号
エリア: 北米

 国賓として米国を訪問したポーランドのクワシニエフスキ大統領夫妻が、七月十七日、ブッシュ大統領夫妻主催の歓迎晩餐会に出席した。 国賓を迎えるのはこれが二人目となるブッシュ大統領がクワシニエフスキ大統領をひときわ重視したのは、ブレア英首相と並ぶ欧州の強力な同盟者だからだ。クワシニエフスキ大統領は、晩餐会に先立つ会見でも「テロリストには安全な避難地はない」と言い切った。英、独、露語を自由に操り、四十七歳と若く、ロシアの内情にも詳しい同大統領は、米国にとって貴重な存在なのだ。 ホワイトハウスは、細心の気配りで晩餐会を準備した。八人掛けの各丸テーブルには金糸と銀糸で文様を縫い込んだ豪華なダマスク織りのテーブルクロス。テーブル中央にはバラとガーベラの花でポーランド国旗の色である赤と白のコントラストを作った。園芸をたしなむローラ夫人好みのシンプルな演出である。メニューは次のとおりだった。

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執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
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