なぜ今、経産省・古賀茂明氏に「退職勧奨」なのか?

執筆者:原英史 2011年6月28日
カテゴリ: 政治
エリア: アジア

 

経産省の現役官僚でありながら、公務員制度改革や東電処理プランなど大胆な提案を繰り返していた古賀茂明氏が、事務次官から「退職勧奨」を受けたと報じられる。
そもそも「退職勧奨」とは何なのか、改めて整理しておく。
 
「退職勧奨」とは、読んで字のごとく、「退職してはどうか?と勧める」だけで、「免職」とは違う。「退職勧奨」を受けて、退職するかどうかは、本人次第だ。
 
伝統的に、霞が関の中央官庁では、天下りとセットで「退職勧奨」がなされてきた。
つまり、定年前に「こういう天下りポストを用意したので、退職してはどうか?」というパターンで、その後は役所のお世話で天下りポストを転々とする。
天下りがセットになっているから、単なる「勧奨」であっても、受けた側はほぼ確実に「勧奨受諾」したものだ。
 
かつて野党時代の民主党は、こうした慣行をなくすべきと主張。「早期退職勧奨の禁止」を柱とする法案を国会に提出したこともあった(2007年)
だが、政権交代後は、過去の主張は封印して「退職勧奨」を続けており、今回もその一例となった。
 
民主党政権の立場は、現在行っている「退職勧奨」は、「天下りとセット」の従来型ではなく、単に「退職してはどうか?」と言っているだけ、ということのはずだ。
 
だが、「天下りとセットの退職勧奨」とは違うというのであれば、今回のケースは、いったい何のための「退職勧奨」なのか?
少なくとも以下の点が明確にされるべきだろう。
 
(1)「退職勧奨」の理由は何なのか?
・「政権批判的な言動への懲罰」なのか?
・「役所の暗黙の掟に反し、メディアでいろいろな発言をしたことへの意趣返し」なのか?
・「政府内で使い道がなく、不要な人材だから」なのか?
 
(2)その判断をしたのは、本来の人事権者である経産大臣なのか、事務次官なのか、官邸なのか?
 
なお、(1)であげた、いくつかの選択肢のうち、「古賀氏が不要な人材だから」というのは、にわかには信じ難い。原子力政策や電力政策の抜本的な見直しが求められようとしている中、古賀氏は、今の経済産業省ないし政府にとって、最も求められる人材の一人ではないか。
 
 
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執筆者プロフィール
原英史(はらえいじ) 1966(昭和41)年生まれ。東京大学卒・シカゴ大学大学院修了。経済産業省などを経て2009年「株式会社政策工房」設立。政府の規制改革推進会議委員、国家戦略特区ワーキンググループ座長代理、大阪府・市特別顧問などを務める。著書に『岩盤規制―誰が成長を阻むのか―』、『国家の怠慢』(新潮新書)など。
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