ムスリム同胞団は待ちの戦術に回帰

執筆者:池内恵 2012年2月22日
タグ: 大統領選

 ムスリム同胞団は、先週末の協議で、大統領選挙への支持候補者を決められず、3月10日に開始する立候補登録が終了する4月8日以降に、支持候補決定を先送りすることになったようだ。
http://english.ahram.org.eg/NewsContent/1/64/35027/Egypt/Politics-/Brotherhoods-party-postpones-announcing-their-pres.aspx

 軍の威信が揺らぐ中、「コンセンサス候補」を示して軍に助け船を出し、主導権を握ろうかというところだったが、結局再び「自らは矢面に立たない」「勝ち馬に乗る」という基本路線に戻ったと言えよう。さまざまな不満や摩擦が噴出するエジプト政治を積極的に引っ張っていく勢力としての能力は示せなかったが、逆に今回の支持候補表明見送りは、組織としての粘り強さ、慎重さをよく示してはいる。

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執筆者プロフィール
池内恵(いけうちさとし) 東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野教授。1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授、2018年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 (新潮選書)、 本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』(同)などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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