政治をゼロから考える (8)

小沢一郎氏に見る「政治家のリーダーシップ」

執筆者:宇野重規 2012年10月20日
エリア: アジア

質問 「政治家のリーダーシップとは何ですか」


 実は筆者は「政治家のリーダーシップ」論が好きではありません。もちろん、巷には「政治家にはビジョンが必要だ」、「やはり決断力だ」、「時代を先読みする洞察が」、「いやいや調整力も重要だ」といった議論がたくさんあります。どれもそれなりにもっともなのですが、何だかぴんとこないのです。
 ひとつには、これらの多くが、そのままタイトルを「ビジネスにおけるリーダーシップ」論に置き換えても、そのまま通用しそうな点がひっかかるのです。もしそうだとしたら、これらは別段「政治家の」と銘打つ必要はないということになります。あえて政治の世界においてリーダーシップを問うとすれば、そこに固有な何かを探る必要があります。
 もうひとつは、政治における「リーダーシップ」願望に、どこか危ういものを感じるからです。現在のぐちゃぐちゃした状況を、一挙に打開してくれる人はいないのか。そのような思いはよくわかるのですが、やはり政治とは面倒なものです。それを自分たちの力で1つひとつクリアすることが大事だし、何より人任せの発想は責任放棄にもつながります。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
宇野重規(うのしげき) 1967年生れ。1996年東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。博士(法学)。東京大学社会科学研究所教授。専攻は政治思想史、政治哲学。著書に『政治哲学へ―現代フランスとの対話』(東京大学出版会、渋沢・クローデル賞ルイ・ヴィトン特別賞)、『トクヴィル 平等と不平等の理論家』(講談社、サントリー学芸賞)、『〈私〉時代のデモクラシー』(岩波新書)、共編著に『希望学[1]』『希望学[4]』(ともに東京大学出版会)などがある。
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