クオ・ヴァディス きみはどこへいくのか?

キプロスの共存への道 聖火リレーの傲慢

執筆者:徳岡孝夫 2008年6月号

 地中海に浮かぶキプロスの、ファマグスタという地名を御存じだろうか。首都ニコシアから東に五、六十キロの外港……などという講釈は必要ない。ファマグスタは、オセローがデズデモナを殺した町である。私はその町へ行き、誰ひとり殺さず、一晩ゆっくり寝て帰ってきた。 今はどうか知らないが、一九七〇年代のアラブ諸国は、一度でもイスラエルの土を踏んだ者を入国させなかった。イスラエルという国そのものが現に存在するのを認めず、「被占領下のパレスチナ」と呼んだ。アラブ全体が今日のハマスと同じ原理主義だった。 イスラエルに入った痕跡あるパスポートの所持者は、アラブの国への入国を許さない。空港から追い返した。

カテゴリ:
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
徳岡孝夫(とくおかたかお) 1930年大阪府生れ。京都大学文学部卒。毎日新聞社に入り、大阪本社社会部、サンデー毎日、英文毎日記者を務める。ベトナム戦争中には東南アジア特派員。1985年、学芸部編集委員を最後に退社、フリーに。主著に『五衰の人―三島由紀夫私記―』(第10回新潮学芸賞受賞)、『妻の肖像』『「民主主義」を疑え!』。訳書に、A・トフラー『第三の波』、D・キーン『日本文学史』など。86年に菊池寛賞受賞。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top