エチオピア「新自由主義的権威主義」は新たな政治体制モデルとなるか

執筆者:遠藤貢 2021年7月8日
タグ: 権威主義 紛争
エリア: アフリカ
北部ティグレ州で軍に攻撃を命じたと国民に説明するアビー首相(撮影2020年11月4日)(C)AFP=時事
冷戦終焉以降、「民主主義を装った権威主義」が多く見られたアフリカ。エチオピアもその一つだ。 しかし筆者は、そもそも国際社会から民主主義を志向することを求められない新たな権威主義体制として、エチオピアを位置付ける。

 

 アフリカの政治体制に関わる問題は、基本的には冷戦終焉以降の約30年にわたる時間軸の中に位置づけられる。

 1990年代には、いわゆる「政治的コンディショナリティー」という、援助の条件として複数政党制の下での自由かつ公正な選挙の実施などを求める国際的な民主化支援が欧米諸国によって実施された。

 こうした外からの民主化圧力の下でアフリカ諸国の政治改革は進んだが、この動きは極めて短期間に、しかも表層的に複数政党制と選挙のみを導入するといった「改革」の下で進められたため、十分な制度化を伴わない体制変革という側面をも有していた。そのため、このような「改革」で生まれたアフリカの政治体制には、当時「選択肢なき民主主義」(Choiceless Democracy)という評価もなされた。

カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
遠藤貢(えんどうみつぎ) 1962年秋田県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科・教授。東京大学・大学院総合文化研究科・助手、助教授などを経て、2007年より現職。専門はアフリカ現代政治。主な業績として、『崩壊国家と国際安全保障:ソマリアにみる新たな国家像の誕生』(単著、有斐閣、2015年)、『中国の外交戦略と世界秩序』(共編著、昭和堂、2019年)、『紛争が変える国家』(共編著、岩波書店、2020年)、African Politics of Survival(共編著、Langaa Rpcig、2021年)など。
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