Weekly北朝鮮『労働新聞』 (40)

衛星打ち上げは2017年ICBM発射に匹敵する慶事扱い、「自らの力と技術力で」の開発を誇示(2023年11月19日~11月25日)

執筆者:礒﨑敦仁 2023年11月27日
タグ: 北朝鮮 金正恩
エリア: アジア
11月23日に平壌・木蘭館で行われた祝宴では、金正恩の隣に「尊敬するお嬢さま」が座った(『わが民族同士』HPより)
平壌・木蘭館で催された祝宴への出席者として、金正恩ファミリーと金徳訓総理に続いて崔善姫外相を紹介。このことは、軍事偵察衛星の打ち上げ成功にロシアの技術協力があった可能性も示唆するが、推測に留まる。娘の尊称は「尊敬するお嬢さま」に落ち着いたようだ。『労働新聞』注目記事を毎週解読
 

 11月22日付から1面トップは、軍事偵察衛星の打ち上げに関する記事が続いている。21日22時42分、北朝鮮は軍事偵察衛星の再々打ち上げに踏み切った。22日0時からの打ち上げ予告期間より1時間以上も早い打ち上げとなった。打ち上げのフライングについて合理的な理由を見出すことはできない。

 金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長は、平安(ピョンアン)北道鉄山(チョルサン)郡の西海衛星発射場からの打ち上げに立ち会った後、22日午前には平壌総合管制所に足を運び、グアムなどの米軍基地を撮影した航空宇宙写真を見て、「自らの力と技術力で航空宇宙偵察能力を培った」「万里を見下ろす『眼』と、万里を叩く強力な『拳』を手中にした」と豪語した。

 金正恩は、「当面の航空宇宙偵察能力造成計画を党中央委員会第8期第9回総会に提出するという国家航空宇宙技術総局の提案を承認した」と発言していることから、年末には総会が開催され、来年も打ち上げが続くものと見込まれる。衛星の開発方針は、2021年1月の朝鮮労働党第8回大会で採択された「国防科学発展および兵器体系開発5カ年計画」で明確にされた。昨年12月末に金正恩は、「最短の期日」で打ち上げることを指示したが、実際には2回の失敗を経てようやく「成功」にこぎつけた形である。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
礒﨑敦仁(いそざきあつひと) 慶應義塾大学教授。専門は北朝鮮政治。1975年生まれ。慶應義塾大学商学部中退。韓国・ソウル大学大学院博士課程に留学。在中国日本国大使館専門調査員、外務省第三国際情報官室専門分析員、警察大学校専門講師、米国・ジョージワシントン大学客員研究員、ウッドロー・ウィルソンセンター客員研究員など歴任。著書に『北朝鮮と観光』(毎日新聞出版)、共著に『最新版北朝鮮入門』(東洋経済新報社)など。
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