Weekly北朝鮮『労働新聞』 (50)

紙面から消えた日本「岸田政権」への批判(2024年1月28日~2月3日)

執筆者:礒﨑敦仁 2024年2月5日
タグ: 北朝鮮 金正恩
エリア: アジア
1月28日午前、海軍司令官らとともに潜水艦発射戦略巡航ミサイル「プルファサル3-31」型の発射実験を指導した金正恩国務委員長(『労働新聞』HPより)
1月下旬の潜水艦発射戦略巡航ミサイルの発射実験は、日米韓の外交日程などとは「全く関係なく実施」したと主張されている。米国を批判する記事が継続的に掲載される一方、能登半島地震に関する「見舞い電」(1月5日)以降、日本の岸田政権への名指し批判は鳴りを潜めている。『労働新聞』注目記事を毎週解読
 

 1月29日付1面は、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が新たに開発された潜水艦発射戦略巡航ミサイル「プルファサル(火矢)3-31」型の発射実験を指導したとの記事であった。金正恩は、昨年9月の新型潜水艦進水式の際に掲げた「海軍の核武装化」に再び言及している。今回の実験は、「地域情勢とは全く関係なく実施された」という。北朝鮮の兵器実験が、日米韓の外交日程などに逐一タイミングを合わせているものではないとの主張であり、極超音速ミサイル発射実験に関する1月15日付の記事でも同じ表現が見られた。

『労働新聞』の構成は長年変化に乏しい。最高指導者の動静報道があれば第1面に大きく掲載され、最終ページは韓国と国際社会に関する記事が載る。

 例えば、2月1日付の最終第6面に掲載されたのは、「資本主義の滅亡を促す甚だしい社会的不平等」「日増しに盛り上がる人身売買犯罪」といった記事で、資本主義社会の問題点を指摘しているほか、「米国の制裁に強力に対応する立場強調」「米国の無根拠の主張排撃」と題する記事で、ベネズエラ国会議長やイラン外務省が米国を非難した事実を伝えている。

カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
礒﨑敦仁(いそざきあつひと) 慶應義塾大学教授。専門は北朝鮮政治。1975年生まれ。慶應義塾大学商学部中退。韓国・ソウル大学大学院博士課程に留学。在中国日本国大使館専門調査員、外務省第三国際情報官室専門分析員、警察大学校専門講師、米国・ジョージワシントン大学客員研究員、ウッドロー・ウィルソンセンター客員研究員など歴任。著書に『北朝鮮と観光』(毎日新聞出版)、共著に『最新版北朝鮮入門』(東洋経済新報社)など。
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