【Explainer】EUの大型防衛基金に非EU企業は参加できるのか

2025年3月30日
タグ: EU ウクライナ
エリア: ヨーロッパ
欧州委員会は、域外企業が参加する道もあると主張している。ただし、それは簡単ではない (C)REUTERS/Yves Herman
欧州の防衛力強化を目指す総額8000億ユーロの「欧州再軍備計画」は、EU加盟国に対する財政規律ルールの一時的緩和と1500億ユーロの再軍備基金「欧州のための安全保障行動(SAFE)」が二本柱だ。このSAFEの融資スキームからイギリスとアメリカという防衛産業大国の企業が排除されたと不満の声も上がっている。実際にはどうなのか。

[ブリュッセル発/ロイター]欧州委員会は3月19日、「欧州再軍備計画(ReArm Europe Plan)」において、財政規律ルールの一時的緩和と並ぶ柱である1500億ユーロの再軍備基金「欧州のための安全保障行動(SAFE)」に関する規則案を提示した。これは、ロシアの攻撃への懸念や米国の安全保障提供に対する不信感が高まるなか、2030年までに欧州連合(EU)自身の防衛体制を整えるという大規模な取り組みの一環だ。

 SAFEは、EU債券で市場から調達した資金を融資する。融資を受けるためには、EU加盟国は他の加盟国やウクライナなどとの共通調達を通じて、防衛力の強化や欧州軍需産業の拡充を目的とした欧州防衛産業投資計画を実施する必要がある。

 しかし一部では、英国(BAEシステムズの本拠地)や米国(ロッキード・マーチンやボーイングなどの大手防衛企業を抱える)といった防衛産業で大きな存在感を持つ国の企業が、この基金から排除されているとの不満も上がっている。

 これに対し欧州委員会は、域外企業が参加する道もあると主張している。ただし、それは簡単ではない。

 参加資格の基準はEU内部でも議論の的となっている。フランスは「欧州製品優先(buy European)」政策を強く支持している一方、ドイツやオランダなどはより開かれたアプローチを支持している。

 以下は、現時点ではまだ提案段階にある規則の概要であり、今後のEU加盟国間の交渉によって変更される可能性がある。

カテゴリ: 軍事・防衛
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