米政府閉鎖明けに待つ「連れ安リスク」と「高い期待値」の闇鍋相場

執筆者:滝田洋一 2025年11月18日
エリア: アジア
トリプル安は「財政リスクへの警戒」というより、株・債券・円それぞれが別ファクターで動いていると見るべきではないか[2025年11月18日の日経平均株価などを示すモニター](C)時事
政府閉鎖で途切れていた米9月雇用統計データが20日に発表。その前日(19日)にはソフトバンクGが巧みに利食い売りしたエヌビディアの決算も控えている。米雇用は減速基調で、AI株はすでにいいとこ取りの極みにある。世界の金融・株式市場にリスクオフムードが広がり日経平均も足元で調整するのは当然だが、一方で高市政権への消費者・経済界の期待値は市場関係者も舌を巻く高さにある。この先が闇鍋相場になるのは必至、その中で浮上するはずの注目すべきファクターとは。

 AI(人工知能)ビジネスの雄ソフトバンクグループ(SBG)がくしゃみをすると、日本株全体が風邪をひく。11月半ばになって日本の株式市場はそんな様相を呈している。11月14日の日経平均株価は一時1000円あまり下落し、905円30銭安の5万376円53銭で取引を終えた。下げへの寄与度(何円分だけ日経平均を押し下げたか)をみれば一目瞭然だろう。

 アドバンテスト=307円08銭、SBG=280円81銭、東京エレクトロン=208円08銭。半導体検査装置の大手アドバンテスト、SBG、半導体製造装置の大手である東京エレクトロン。この3社の日経平均下落への寄与度は合わせて795円97銭。225社で構成する日経平均の下落幅905円30銭の、実に88%にものぼる。

 1620円93銭安の4万8702円93銭となった11月18日も、下げへの寄与度はSBG=304円84銭、アドバンテスト=197円88銭、東京エレクトロン=182円50銭。AI関連3兄弟の日経平均下落への寄与は42%。(ツメル)(ツメル)日経平均が5万円の天井を突破し、10月31日に5万2411円34銭の史上最高値をつけた原動力となったAI関連3銘柄が逆回転を起こしているのだ。

「高市ラリー」のさなかの日経平均の225銘柄は、昇り龍のようなAI3銘柄と残り222銘柄に、クッキリ分けられた。街行く人々ばかりでなく、AI3銘柄の投資に出遅れた投資家たちが「株高の実感が伴わない」というのも、あながち誇張ではない。

日経平均を押し上げた「AI3銘柄」が抱える懸念

 値がさ株(株価が高い銘柄)の影響を受けやすい日経平均と、東証プライム市場のほとんどの銘柄で構成されているTOPIX(東証株価指数)。植田和男日銀総裁が10月29日の月例経済報告関係閣僚会議に提出した資料に基づき、2つの指数を比べてみよう。AI3銘柄を原動力とした日経平均の上昇ピッチの速さが見て取れるはずである。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
滝田洋一(たきたよういち) 名古屋外国語大学特任教授 1957年千葉県生れ。慶應義塾大学大学院法学研究科修士課程修了後、1981年日本経済新聞社入社。金融部、チューリヒ支局、経済部編集委員、米州総局編集委員、特任編集員などを歴任後、2024年4月より現職。リーマン・ショックに伴う世界金融危機の報道で2008年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」解説キャスターも務めた。複雑な世界経済、金融マーケットを平易な言葉で分かりやすく解説・分析、大胆な予想も。近著に『古典に学ぶ現代世界』『世界経済大乱』『世界経済 チキンゲームの罠』『コロナクライシス』など。
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