「今週のトランプ」ラウンドアップ
「今週のトランプ」ラウンドアップ (36)

トランプ大統領の発言とアクション(11月13日~20日):エヌビディア好決算でもAIブームに懸念の「なぜ?」

執筆者:安田佐和子 2025年11月22日
エリア: 北米
AI半導体の需要そのものは力強い[ワシントンDCで開かれた米サウジ投資フォーラムで記念撮影を行うイーロン・マスク氏(左)、エヌビディアのファンCEO(中央)、トランプ大統領(手前)ら=2025年11月19日](C)AFP=時事
トランプ大統領と政権キーパーソンから飛び出した1週間分の発言を、ストリート・インサイツ代表取締役・安田佐和子氏がマーケットへの影響を中心に詳細解説。▼決算発表直前、トランプ氏が3連続投稿▼本当の懸念は「実装」「収益化」「資金繰り」▼低金利要求もAI投資環境への配慮

 

決算発表直前、トランプ氏が3連続投稿

 ドナルド・トランプ大統領は、米国株式市場の上昇を自らの政策成果として誇示する傾向がある。その発言はしばしば市場参加者の注目を集め、時に「買い場」のシグナルとして受け止められることも少なくない。

 たとえば、2025年4月9日、大統領は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」において、「今は米株の絶好の買い場だ!」と投稿。直後に相互関税の一部を90日間停止すると発表し、米株相場はこれを好感して上昇に転じた。さらに5月8日には「今こそ株を買うべき時だ」と再び発言。週末に開催された5月10〜11日の米中閣僚級協議を経て、関税率の大幅な引き下げで合意に至り、翌12日の米株相場は大幅高を迎えた。一連の発言は政策転換の“地ならし”として機能する反面、一部で市場誘導的との懸念ももたらし、批判が多いことも事実である。

 【チャート1:トランプ発言と米株動向】

 こうした「市場との対話」は、トランプ氏の1期目にも見られた。2018年のクリスマス、株価が急落する中で記者団に対し「押し目買いの好機だ」と語り、実際にその直後の12月26日に市場は底打ちした。

 半導体大手エヌビディアの決算発表が控えた11月19日には、同社のジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)の発言を引用する形で、トランプ氏は3連続の投稿を行った。米国内での半導体生産の復活を印象づける狙いがあったのだろう。

 世界中の投資家の注目を集めた同社の第3四半期(8〜10月)決算は、1株利益1.30ドル、売上高は前年比62%増の570億ドルと、そろって市場予想を上回る結果となった。さらに、11〜1月期の売上高見通しも約650億ドルと、予想の620億ドルを超え、人口知能(AI)半導体需要の力強さをみせつけた。フアン氏が10月、2025年から2026年に5000億ドル超のチップ受注を獲得したと発言したことも、改めて評価につながった。こうした流れを受け、トランプ氏のSNS投稿が、またしても株高に繋がるかと思われた。

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執筆者プロフィール
安田佐和子(やすださわこ) ストリート・インサイツ代表取締役、経済アナリスト 世界各国の中銀政策およびマクロ経済担当の為替ライターの経験を経て、2005年からニューヨークに拠点を移し、金融・経済の最前線、ウォール街で取材活動に従事するかたわら、自身のブログ「My Big Apple NY」で現地ならではの情報も配信。2015年に帰国、三井物産戦略研究所にて北米経済担当の研究員、双日総合研究所で米国政治経済や経済安全保障などの上級主任/研究員を経て、株式会社ストリート・インサイツを設立。その他、トレーダムにて為替アンバサダー、計量サステナビリティ学機構にて第三者委員会委員、日本貴金属マーケット協会のフェローを務める。
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