米ポリティコの10月28日付の報道によると、ハンガリーのオルバン・ビクトル首相は、近隣国のチェコとスロバキアとともに、“ウクライナ懐疑連盟”を結成しようと目論んでいる模様だ。チェコ側の協力者としては、タカ派として知られるアンドレイ・バビシュ前首相が、スロバキアの場合はロベルト・フィツォ首相が念頭にあるようだ。
ロシアとの関係の近さで知られるハンガリーのオルバン首相だが、国民の支持には陰りが生じている。来年4月までに実施される同国の総選挙では、首相が率いる与党フィデスが、マジャル・ペーテル氏が率いる新興右派政党ティサに敗れる展開が意識されている。政権交代が実現しなくとも、首相の求心力の低下は必至の情勢である。
国内の保守派の支持を回復するための一手段としてオルバン首相が目を付けたのが、この“ウクライナ懐疑連盟”を結成することのようだ。EU(欧州連合)はウクライナ支援に注力しているが、そのようなことに血税を使うくらいなら、ロシアとの関係の改善に努めるべきである。概ねこのような理屈でオルバン首相はEUを批判している。
こうした主張は、国内の保守派の共感を得やすい。さらに、それで近隣諸国と結託して、その盟主にハンガリーが収まるという体裁が取れれば、保守派はさらに自身を支持することになる。オルバン首相にはそうした判断があるようだ。従来ならばポーランドも誘えたが、同国の現政権は親ウクライナ派であるため自陣営への勧誘は見込めない。
チェコの場合、10月初旬に行われた総選挙の結果を受けて、バビシュ前首相の再登板が有力視されている。スロバキアのフィツォ首相もタカ派であり、EU懐疑論者だ。したがって、3カ国がウクライナ懐疑連盟を結成する可能性は相応に高くなってきている。
しかしそうだからと言って、この枠組みが何らかの実効力を持つとはまず考えにくい。
見逃せないウクライナ復興需要
最大の理由は、ウクライナと国境を接する国々において、ウクライナとの経済的な結びつきが強まっていることにある。ウクライナと国境を接するEU加盟国は、アルファベット順にハンガリー、ポーランド、ルーマニア、スロバキアの4カ国だ。一方、チェコはウクライナと国境を接していない。その意味では、一歩引いた存在といえよう。
ここで、各国の輸出総額に占める対ウクライナ輸出の割合を、開戦前の2021年と2024年とで比較すると、ウクライナと国境を接するEU加盟4カ国のうちハンガリーを除く3カ国で上昇している(図表1)。特に上昇しているのが、EUによるウクライナ支援の実質的な拠点であるポーランドで、2.2%から3.8%へと比率を高めている。
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