小泉防衛相がトップセールス、インドネシアへの艦艇輸出は「多国調達」の壁を破れるか

執筆者:赤井俊文 2025年12月24日
装備品輸出には、対中抑止を強める安全保障上の意義と、防衛産業としての採算性の両面が問われる[左からインドネシアのシャフリ・ジャムスディン国防相、同スギオノ外相、日本の茂木敏充外相、小泉進次郎防衛相=2025年11月17日、東京・飯倉公館](C)AFP=時事
日本製艦艇がインドネシアの防衛装備に採用されれば、対中国牽制のネットワークに形成にも有効だ。だが、インドネシアの基本戦略は「多国調達」であり、韓国との戦闘機共同開発では事業費未払い問題も発生した。海軍は中国製の中古艦艇を購入する計画も検討しており、日本側の思惑が素直に通る環境にはない。

 小泉進次郎防衛相は11月17日、日インドネシア外務・防衛閣僚会合(2+2)のため来日したシャフリ・シャムスディン国防相を海上自衛隊横須賀基地に招き、護衛艦などを売り込んだ。防衛装備輸出の「トップセールス」だが、インドネシアは日本以外からも装備品を幅広く購入する「多元外交」を展開しており、交渉が実を結ぶかは見通せない。

 インドネシアはイタリア、トルコ、フランス、中国など複数国との艦艇・潜水艦案件を並行させる「多国調達」を進めており、日本は調達先の一候補にすぎない。

 イタリアの造船大手フィンカンティエーリとは、イタリア海軍向けに建造中だった多目的哨戒艦(PPA)2隻を転用して購入する契約を結び、早期受領と自国乗員の訓練加速を図っている。

 トルコの造船コンソーシアムTAISとは、対潜・対水上戦に特化したI級フリゲート2隻の取得で合意し、トルコ側も「同級初の輸出」として関係強化を誇示する。

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執筆者プロフィール
赤井俊文(あかいとしふみ)
在インドネシア在留邦人のための日刊紙「ジャカルタ日報」共同創業者。業界紙、時事通信社記者を経て独立。フリージャーナリストとしてネットメディア、週刊誌に寄稿実績を積んだ後、インドネシアを起点にASEANのニュースを日本の読者に伝える。ジャカルタ日報の公式Xはhttps://x.com/jakarta_nippo
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