Weekly北朝鮮『労働新聞』
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金正恩の娘が「錦繍山太陽宮殿」を初めて訪問(2025年12月21日~2026年1月3日)

執筆者:礒﨑敦仁 2026年1月5日
タグ: 北朝鮮 金正恩
エリア: アジア
今回の参拝では李日煥党書記の「復権」も注目される[朝鮮中央通信(KCNA)が2日に公開した写真=2026年1月1日](C)AFP=時事
金日成と金正日の遺体が永久保存されている錦繍山太陽宮殿を金正恩が訪問した。新年に際しての参拝は2023年以来となる。参拝者の中心に立ったのは金正恩の娘で、彼女が後継者として育てられていることを内外に強く印象付けた。【『労働新聞』注目記事を毎週解読】

「原子力戦略誘導弾潜水艦」の建造事業を現地指導

 年末年始の『労働新聞』は盛り沢山であった。

 朝鮮労働党第8回大会で示された5カ年計画の最終年となる2025年の年の瀬には、経済的、軍事的成果が次々と示された。白頭山(ペクトゥサン)の麓に位置する三池淵(サムジヨン)観光地区に5つのホテルが竣工した。12月20日には落葉松(イッカル)ホテルと密営(ミリョン)ホテルの竣工式が挙行され、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長父娘が出席した。また、21日には小白水(ソベクス)ホテル、青峰(チョンボン)ホテル、白樺(ポンナム)ホテルが竣工した。

 三池淵の観光開発については、平壌(ピョンヤン)の外国文出版社が運営するウェブサイト「朝鮮の出版物」(http://www.korean-books.com.kp/)が2025年4月に公開した観光案内地図「三池淵市指南」を通じて位置関係など概要を把握することができる。冬はマイナス20度を下回るこの地域が国外からの観光客を呼び込むには、交通インフラ整備のほかに電力問題の解決も課題となる。

 また、「地方発展20×10政策」2年目の成果として20カ所の地方工業工場全てが竣工したことも確認できるが、2024年12月に唐突に示された「3大必須対象」、すなわち①保健施設、②複合型文化センター、③糧穀管理施設の建設については計画達成に至らなかったかもしれない。

 一方、軍事面な成果として、12月25日付1面トップには、金正恩が「8700トン級の原子力戦略誘導弾潜水艦」の建造事業を現地で指導したことについての記事が掲載された。具体的な場所や訪問日は明らかにされていない。この事業について金正恩は、第8回党大会で示された「国防力発展5大重点課題」の一つだとして、その重要性と意義を改めて強調し、「原子力潜水艦はわれわれの艦隊兵力の戦闘力を飛躍させ、国家の戦略的主権安全守護に寄与する」などと述べた。記事の末尾には、金正恩が「水中秘密兵器」の研究状況を確認したことにも触れている。

 25日付第3面下段では、金正恩が24日に共和国ミサイル総局による新型対空ミサイルの発射実験を参観したことを伝えた。「開発中の高空長距離対空ミサイルシステムの戦術的、技術的評価のための初実験」だったとされる。さらに28日には長距離戦略巡航ミサイルの発射訓練に立ち会ったほか、重要軍需工業企業所を訪れたことをそれぞれ29日付、30日付が地方工場の竣工式に関する記事に続いて報じている。戦争特需も相俟って、民生面と軍事面でともに成果を誇示できた、稀有な一年であったと言える。

今年も新年祝賀公演に娘を同伴

 2026年の元日付は、平壌のメーデー競技場で新年祝賀公演が開催され、金正恩が観覧したことについて伝えた。掲載写真では娘や李雪主(リ・ソルジュ)夫人とともに公演を楽しんだことが分かる。元日付の『労働新聞』第1面が祝賀公演で飾られるのは、これで3年連続となった。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
礒﨑敦仁(いそざきあつひと) 慶應義塾大学教授。専門は北朝鮮政治外交。1975年生まれ。慶應義塾大学商学部中退。韓国・ソウル大学大学院博士課程に留学。在中国日本国大使館専門調査員、外務省第三国際情報官室専門分析員、警察大学校専門講師、米国・ジョージワシントン大学客員研究員、ウッドロー・ウィルソンセンター客員研究員など歴任。著書に『北朝鮮と観光』(毎日新聞出版)、『北朝鮮を読み解く』(時事通信社)、共著・編著に『最新版北朝鮮入門』(東洋経済新報社)、『北朝鮮を解剖する』(慶應義塾大学出版会)など。
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