現在議論されている政権転覆とその後の統治体制のシナリオからは、イラク国内情勢についての考察が欠如しているのではないだろうか。「湾岸以前」にくらべ、政権の支配力はむしろ強まっていることに注目せよ。 米国要人達の発言からは、サッダーム政権打倒の意志が垣間見える。多くの報道では国外反体制派が中心となった連邦制の民主国家の樹立や、第二次世界大戦後の日本、ドイツのようなGHQ(連合国軍総司令部)形式での占領体制などのシナリオが語られているが、そこにイラク国内の諸要素についての考察が欠如してはいないだろうか。国内の状況を語る時に、湾岸戦争以前の状況が専ら前提とされ、国連による経済制裁下で大きな変化を経験したイラクが不在なのではないであろうか。
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