超人・李嘉誠は追い詰められた

執筆者:樋泉克夫 2003年6月号
タグ: 香港 中国 台湾
エリア: アジア

景気低迷、後継者不在、北京の権力構図の変化……。香港経済を牛耳ってきた「李超人」は、時代の波に呑まれるのか。 長期低迷経済に喘いでいた香港は、いまやSARS(重症急性呼吸器症候群)によって「死の街」になりかねない情況だ。 香港の活力を象徴する海外からの観光客は激減し、繁華街には閑古鳥が鳴き、ホテル、小売店、観光業者の多くは、いつ倒産してもおかしくないほど。繁栄の指標だった不動産業界も一向に振るわない。友人の医師は「北京でも広東でも、中国側当局の香港軽視がSARS被害拡大を招いた。英国領だったら、こんな事態にならなかったはず。一国両制こそ諸悪の根源だ」と憤る。おそらくこれが、香港住民大多数の偽らざる心境だろう。

カテゴリ: 経済・ビジネス
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
樋泉克夫(ひいずみかつお) 愛知県立大学名誉教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年から2017年4月まで愛知大学教授。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top