パレスチナの国連加盟申請

パレスチナ自治政府のアッバース大統領は16日、ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区ラーマッラーで演説を行い、国連安保理に国連加盟申請を行うと宣言した。http://www.maannews.net/eng/ViewDetails.aspx?ID=420778

9月21日に始まる第66回の国連総会の一般討論の場で、アッバース大統領はまず意思表明を行い(おそらく23日)、その後、潘基文国連事務総長に加盟申請書を提出するものと見られる。

今年9月からの国連総会の会期でパレスチナ国家の国連加盟申請がなされることはかなり以前から明確になっていた(たとえばアッバースのニューヨーク・タイムズ5月16日付論説欄への寄稿http://www.nytimes.com/2011/05/17/opinion/17abbas.html)。国連加盟の可否という法的・形式的手続きそのものが、実質的な中東和平実現・パレスチナ国家設立にはつながりそうもないことも周知の事実である。その意味で、当事者や専門家にとっては、すべてが「歌舞伎」のような芝居になりかねないところであるが、かといって全く意味がないわけではない。これをきっかけにアラブ諸国で進む若者主体の抗議行動の性質が変わり排外主義に向かいかねないなど、中東情勢に不可測の流動化、変化をもたらしかねない。また、国際環境が極端に不利になると考えた場合、イスラエルはこれまでにない法的・政治的(あるいは可能性は低いが軍事的)な対処策を採用して打開しようとする可能性もある。

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執筆者プロフィール
池内恵(いけうちさとし) 東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野教授。1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授、2018年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 (新潮選書)、 本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』(同)などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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