アラブの激動に「追い抜かれた」前衛詩人アドーニスにノーベル文学賞は来るのか

執筆者:池内恵 2011年10月5日

毎年10月はノーベル賞受賞者が発表される季節だ。この時期になると、アラブ人が受賞するのでは、という観測から、新聞記者が私のところにあらかじめ原稿依頼をしてくるので、それで「今年も秋が来たな」と感じるようになったほどだ。今年の文学賞は日本時間106日の夜、決定が遅れればその一週間後の13日に発表があるものとされている。

シリア生まれの詩人アドーニス(Adonis 1930年-)は、ノーベル文学賞の最有力候補として長年取りざたされてきた。日本のメディアで騒がれることの多い村上春樹よりもずっと有力とされていて、イギリスなどでの賭けでもたいてい筆頭に来る。確かに条件は揃っている。ノーベル文学賞をもらう前に受賞していることが多い欧州の国際的文学賞を軒並み受けている。

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執筆者プロフィール
池内恵(いけうちさとし) 東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野教授。1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授、2018年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 (新潮選書)、 本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』(同)などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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