M&A(合併・買収)に伴う巨額の手数料支払いが表面化したオリンパスに、会長への100億円を超す貸付金が明らかになった大王製紙。自らが選んだ第三者委員会の報告書を“無視”して社長居座りを決め込む九州電力。日本のコーポレートガバナンス(企業統治)が音を立てて崩れている。経営者としての自覚に欠け、問題が発覚しても自ら責任を取ることができない。ここまで日本の経営者のタガが外れたのはなぜなのか。
オリンパスは会長辞任でも真相究明に消極的
2000億円余りの買収案件に際して、690億円もの手数料をファイナンシャル・アドバイザー(FA)に支払ったことなど、巨額買収の不透明さが指摘されていたオリンパス。10月14日に、マイケル・シー・ウッドフォード社長を解職して社長を兼務したばかりだった菊川剛会長が、26日に会長兼社長の職を辞した。
専務から昇格した高山修一新社長は、就任早々、FAに対する支払いは正当で、不正はないとしたが、第三者委員会を設けて事実関係を調査することも表明した。実は、第三者委員会の設置は社長解任のドタバタがあった直後の17日の段階で東京証券取引所が求めていたもの。それをようやく会社側が受け入れたのである。
焦点は第三者委員会の人選だが、さっそくこんな話が聞こえてきた。
人選はオリンパスから依頼された弁護士が行なっているが、この弁護士が、コーポレートガバナンス問題の第一人者とも言える久保利英明弁護士に候補者選びを相談したのだという。東京電力福島第一原子力発電所の事故に関連して東京電力のコーポレートガバナンスを厳しく批判している久保利弁護士は「それなら俺が引き受ける」と即断したそうだ。ところが、会社へ持ち帰って相談すると経営陣は頑として首を縦に振らない。結局、久保利氏の委員就任は幻と消えることになった。
61歳の高山新社長は長岡高専電気工学科を卒業後、1970年に20歳でオリンパス光学工業(現オリンパス)に入社した叩き上げの人物。菊川氏が会長・社長職を辞任したとはいえ取締役に残る中で、同氏が主導した買収案件の問題点をほじくり返すのは難しいと容易に想像がつく。要は第三者委員会に本気になられては困るのだろう。
東京証券取引所の斉藤惇社長は10月28日の定例記者会見で、「意図的に自分たちに有利な人たちだけを選べば、最終的に株主代表訴訟もありえるのではないか」と指摘。公正な人選をするようクギを刺した。
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