トルコ元大統領の遺体解剖がえぐり出す「陰謀」の正体

執筆者:春名幹男 2012年10月8日
エリア: 中東

 トルコの第8代大統領、故トゥルグト・オザル氏の遺体が墓所で掘り起こされ、国立法医学研究所で解剖された。毒物検出の有無など、死因を特定し、約3カ月後に検視報告書が発表される見通しだ。

 実はこの動き、単なる殺人疑惑解明作業などではない。現在、米国寄りの戦略・政策をとり、シリア内戦でも主要な役割を演じているトルコの行方を左右するほど重大な動きにつながる可能性がある。

 オザル元大統領は1983年総選挙で勝利して首相に就任、その3年前から続いていた軍政を民政に戻し、西側寄りの政策を実行して本格的に自由市場経済を導入、非合法クルド人政党、クルド労働者党(PKK)と停戦、湾岸戦争では米国主導の多国籍軍を支持した。現在の共和制トルコの建国の父ケマル・アタチュルク以来の「中興の祖」と呼べるほどの重要な役割を果たした。

カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
春名幹男(はるなみきお) 1946年京都市生れ。国際アナリスト、NPO法人インテリジェンス研究所理事。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授、早稲田大学客員教授を歴任。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『米中冷戦と日本』(PHP)、『仮面の日米同盟』(文春新書)などがある。
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