誰も書かないし、また書く必要もないのだろうが、いま騒ぎになっている安愚楽牧場の社名は、仮名垣魯文の『安愚楽鍋』(明治4-5年)から取ったのであろう。文明開化の先頭を切った文学である。
まだチョンマケに二本差した武士が江戸の町を歩いていた。それが町人、職人たちと一つ座敷に座って、それまで禁忌だった牛鍋を突く。魯文は「御一新」直後の社会革命を、旧幕時代の戯文で描写している。「しからば左様」の時代は永遠に去った。
似たような革命は、このほど21世紀の日本にも起った。御存じ富士山の世界文化遺産入りである。
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