ジョージ・ケナンの懸念

執筆者:田中明彦 2005年5月号
エリア: 北米 アジア

 三月十七日、ジョージ・ケナンが百一歳の生涯を終えた。多くの死亡記事がいうとおり、ケナンは、「封じ込め」戦略の起草者であった。 米国国務省屈指のロシア専門家であったケナンは、一九四六年、「長い電報(The Long Telegram)」と呼ばれることになる電報をモスクワの米大使館からワシントンに送り、ソ連の脅威を説いた。一九四七年、国務省に新設された政策企画室の長となったケナンは、この電報の趣旨を一般向けに書き直し、『フォーリン・アフェアズ』誌に「X」という筆者名で「ソビエトの行動の源泉」と題する論文を発表した。この論文で、彼は「ソ連に対するアメリカ外交の主要要素は、ロシアの拡張傾向に対する長期の、忍耐強く、確固とした、注意深い封じ込めでなければならない」と論じ、ここから「封じ込め(“containment”)」という概念が生まれる。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
田中明彦(たなかあきひこ) 1954年、埼玉県生まれ。東京大学教養学部卒業。マサチューセッツ工科大学大学院博士課程修了(Ph.D. 政治学)。東京大学東洋文化研究所教授、東京大学副学長、国際協力機構(JICA)理事長、政策研究大学院大学学長、三極委員会アジア太平洋地域議長などを経て、2022年4月より再び国際協力機構(JICA)理事長に就任。著書に『新しい「中世」―21世紀の世界システム』(サントリー学芸賞受賞)、『ワード・ポリティクス―グローバリゼーションの中の日本外交』(読売・吉野作造賞)、『アジアのなかの日本』、『ポスト・クライシスの世界―新多極時代を動かすパワー原理』など。
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