世界的な薬害を引き起こしたサリドマイドには、多くの難病に対する薬効が秘められていた。偶然の発見と重大な転機、そしてついには再び日本に導入されるまでの歩みをレポートする。「本当は使って欲しくない。私たち被害者の中には、いまだに名前も聞きたくないという人もいる。しかし、必要とする人がいる以上、使うなとは言えない」 ある男性は複雑な心情を吐露した。サリドマイド――一九五〇年代末から六〇年代初めにかけて胎児に手足の欠損など重い奇形をもたらし、世の中から消えた「悪魔の薬」。「薬害」の代名詞だったこの薬が、難病である「多発性骨髄腫」の治療薬として開発される見通しとなった。発売禁止に追い込まれてから四十年。それは偶然と必然が錯綜した長い歳月だった。
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