ひょっとすると一度このページに書いた話かもしれない。私のコラムは始まって十五年になるから、いわゆる「老いの繰り言」があるかもしれない。 まもなく八月十五日が来て、小泉首相は「適切な判断」のうえで靖国神社に参拝するかもしれない。マス・メディアは手に汗握っている。そういうときに、これは古い記憶の中から浮かんできた話である。 文芸評論の佐伯彰一氏が、先日の新聞に「サイゴンが陥落した日、私は北京にいた」と書いていた。私は時候の挨拶を兼ね「あの日に人民大会堂で中華料理を食べておられたとは羨ましい。私は南シナ海の米第七艦隊の旗艦上で脱水症状になり、苦労していました」と葉書を出した。

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