饗宴外交の舞台裏 (98)

「BSE問題」渦中の英国で魚料理の地位を高めた一品

執筆者:西川恵 2006年3月号
エリア: ヨーロッパ

 日本政府は一月二十日、米国産牛肉にBSE(牛海綿状脳症)の病原体が蓄積しやすい特定危険部位の脊柱が混入していたとして、昨年末に再開したばかりの輸入を再び禁止した。実はここ十年、BSEは外交の饗宴の場にも大きな影響を与えてきた。 一国としては最大の十八万頭を超える牛がBSEを発症した英国は、一九九六年以来、欧州連合(EU)諸国への牛肉の輸出が禁止されている。EUは近く解禁予定だが、バッキンガム宮殿、ダウニング十番地(首相官邸)いずれも、外国首脳を迎えた饗宴では牛肉料理を避け、リスクの少ない子羊を供するようになった。ただもう一点、見落とせないのは魚料理が主菜(メイン)として認知されるようになったことだ。

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執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
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