クオ・ヴァディス きみはどこへいくのか?

三つの文明 妥協の余地なきトリレンマ

執筆者:徳岡孝夫 2006年4月号

 中国に文化大革命があって、日本の新聞がこぞってそれを称賛していた頃、私は新聞社の出す週刊誌編集部でデスクをしていた。欧米の新聞を見ると、さかんに林彪のことを書いている。出席すべき会合に出ず、発言すべき機会に声がない等々。 林は、中国共産党の規約か何かで、毛沢東の後継者と定められている。そういう人物をめぐる異変に、週刊誌が黙っている手はない。私は英語の新聞・雑誌記事を集め、「中国で何かが起っている」という二ページか三ページの特集をデッチ上げてウチの週刊誌に載せた。 発行日の朝だった。出版局と同じフロアにある新聞編集局から外信部長がつかつかと我が編集部に歩み寄り、雑談中のデスク三人を、見下ろして一喝した。

カテゴリ:
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
徳岡孝夫(とくおかたかお) 1930年大阪府生れ。京都大学文学部卒。毎日新聞社に入り、大阪本社社会部、サンデー毎日、英文毎日記者を務める。ベトナム戦争中には東南アジア特派員。1985年、学芸部編集委員を最後に退社、フリーに。主著に『五衰の人―三島由紀夫私記―』(第10回新潮学芸賞受賞)、『妻の肖像』『「民主主義」を疑え!』。訳書に、A・トフラー『第三の波』、D・キーン『日本文学史』など。86年に菊池寛賞受賞。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top