出口なきアフガニスタンの苦悩

執筆者:竹田いさみ 2007年2月号
エリア: 中東 北米 アジア

米ブッシュ政権にとって、出口が見えないのはイラクだけではない。介入からまる5年、アフガニスタンの混迷も極限まで深まっている。このままでは内戦に逆戻りする恐れもある。アフガン人の苦悩も募るばかりだ。 アフガニスタンに駐留する米英主導の多国籍軍「国際治安支援部隊」(ISAF)は、今年の十月十三日に撤退することになっている。米国が描いたロードマップによれば、アフガニスタン国内の治安はそれまでに十分に回復されており、だからこそ多国籍軍は十月に撤退できるはずであった。 ところが現実は、撤退どころか、多国籍軍への増派や駐留の長期化が真剣に検討されるなど、米国のシナリオは完全に破綻しつつある。昨年一年間に、アフガニスタンでは爆弾テロや軍事衝突で四千人が死亡し、負傷者は数万人に達した。多国籍軍の死者も二百人を数え、しかも犠牲者は確実に増加傾向にある。米兵ばかりでなく、英兵やカナダ兵の死者も報告されるようになった。

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執筆者プロフィール
竹田いさみ(たけだいさみ) 獨協大学外国語学部教授。1952年生れ。上智大学大学院国際関係論専攻修了。シドニー大学・ロンドン大学留学。Ph.D.(国際政治史)取得。著書に『移民・難民・援助の政治学』(勁草書房、アジア・太平洋賞受賞)、『物語 オーストラリアの歴史』(中公新書)、『国際テロネットワーク』(講談社現代新書)、『世界史をつくった海賊』(ちくま新書)、『世界を動かす海賊』(ちくま新書)など。
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