FTAを使うと損をする。そんな奇妙な事態が発生している。政府は何をやっていたのか! 産業界が怒るのも当然だ。「貿易大国ニッポンの通商政策は死んでしまったのか」。ある総合電機メーカーの幹部が、吐き捨てるように語った。小泉政権以来、日本政府が鳴り物入りで推し進めて来たFTA(自由貿易協定)戦略。とりわけアジア各国との交渉が、ことごとく国内の産業界の期待に反する結果に終わっているからだ。 タイの首都バンコク。二〇〇七年十一月一日に発効したばかりの日本とのFTAをめぐって、現地の日系企業の間で奇妙な噂が囁かれている。十二月二十三日に実施されるタイ総選挙の結果次第では、タイ政府が「日タイFTA」を破棄するのではないかという観測である。
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