パリで、他でもないデヴィ夫人が語るのを聞いた話である。 正確な日時のことは、聞いたであろうが忘れた。とにかく一九六三、四年頃の某日のことである。デヴィさんはバリへ行くため、東ジャワのスラバヤ空港だか空軍基地だかで、飛行機が来るのを待っていた。建物の外に椅子を出し、そこに座って待った。少数の随員がいた。待つ機影は、なかなか見えない。 飛行場は広い。はるか遠くに人の姿が見えた。近付くにつれ、三人であることが分った。ますます近付いてくる。三人が横一列になり、軍人らしく三人とも手を横に振りながら、姿勢正しく歩いてくる。デヴィさんは、無言で見ていた。
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