クオ・ヴァディス きみはどこへいくのか?

ベタンクール救出とあの夏の沸き立つ自由

執筆者:徳岡孝夫 2008年9月号
エリア: ヨーロッパ 中南米

 今年の七月十四日、フランスの革命記念日(日本でいうパリ祭)に、元人質イングリッド・ベタンクールは、エリゼ宮でサルコジ大統領からレジオン・ドヌール勲章を授けられた。それより少し前の新聞には、前大統領ジャック・シラクが彼女の手をとって接吻する写真が出た。コロンビア革命軍(FARC)に誘拐され、密林の村に監禁されて六年の彼女が、解放されて得た自由と栄誉だった。 ベタンクール(四六)はフランスとコロンビアの二重国籍を持っている。父はパリ駐在のコロンビア外交官。彼女は教育をすべてフランス語で受けた。母がミス・コロンビアだったので、娘である彼女には中年に達してなお美貌の名残りがある。

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執筆者プロフィール
徳岡孝夫(とくおかたかお) 1930年大阪府生れ。京都大学文学部卒。毎日新聞社に入り、大阪本社社会部、サンデー毎日、英文毎日記者を務める。ベトナム戦争中には東南アジア特派員。1985年、学芸部編集委員を最後に退社、フリーに。主著に『五衰の人―三島由紀夫私記―』(第10回新潮学芸賞受賞)、『妻の肖像』『「民主主義」を疑え!』。訳書に、A・トフラー『第三の波』、D・キーン『日本文学史』など。86年に菊池寛賞受賞。
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