「異端妄説」とは福澤諭吉の言葉をちょいと無断借用した。もう始めてどのぐらいになるかわからぬが、今回を最終回とすることにした。本誌の編集長も代わり、編集方針も斬新なものになるだろうから、その邪魔にならぬように身を引くことにした。というのは言い訳で、さほど若くない「蠅」子としては、いささか体力的に疲れてきたということが第一。第二に、世の中なかなか異端妄説といかなくなってきたということである。異端、と思ったらそれが実は本筋になってしまったり、妄説が単なる凡庸な見方にすぎなかったりする。 最終回に言っておきたいことは、この国には、あるいはこの社会にはおかしなところがたくさんあるが、決してどんどん悪くなっているわけではないということである。たとえば、「政治は相変わらず金まみれ」という言い方は、当たり前のことで何も間違っていない、と考える人が圧倒的だろう。
この続きは会員登録をすると読むことができます。
「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。
フォーサイト会員の方はここからログイン