民族的節操 屋良朝苗『屋良朝苗回顧録』

執筆者:船橋洋一 2000年6月号

 一九六九年十一月二十六日、佐藤栄作首相はワシントンでのニクソン米大統領との首脳会談を終えて、意気揚々と帰ってきた。 ついに念願の沖縄返還が成った。 琉球政府行政主席の屋良朝苗はその前夜、東京のホテルに泊まった。佐藤を乗せた特別機が到着する羽田空港での首相出迎えに出席するため、屋良は上京したのである。 屋良が那覇の公舎を出ようとするところに、沖縄人民党など革新系の与党各派代表六人が来て、上京を思いとどまるように強い調子で詰め寄った。それを振り切ってきたが、二時間あまりの機上、懊悩深く、気が重かった。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
船橋洋一 アジア・パシフィック・イニシアティブ理事長。1944年北京生まれ。東京大学教養学部卒。1968年、朝日新聞社入社。朝日新聞社北京特派員、ワシントン特派員、アメリカ総局長、コラムニストを経て、2007年から2010年12月まで朝日新聞社主筆。米ハーバード大学ニーメンフェロー(1975-76年)、米国際経済研究所客員研究員(1987年)、慶應義塾大学法学博士号取得(1992年)、米コロンビア大学ドナルド・キーン・フェロー(2003年)、米ブルッキングズ研究所特別招聘スカラー(2005-06年)。2013年まで国際危機グループ(ICG)執行理事を務め、現在は、英国際問題戦略研究所(IISS)Advisory Council、三極委員会(Trilateral Commission)のメンバーである。2011年9月に日本再建イニシアティブを設立し、2016年、世界の最も優れたアジア報道に対して与えられる米スタンフォード大アジア太平洋研究所(APARC)のショレンスタイン・ジャーナリズム賞を日本人として初めて受賞。近著に『フクシマ戦記 10年後の「カウントダウン・メルトダウン」』(文藝春秋)、『自由主義の危機: 国際秩序と日本』(共著/東洋経済新報社)、『地経学とは何か』(文春新書)、『カウントダウン・メルトダウン』(第44回大宅賞受賞作/文春文庫)など著書多数。
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