学校内でのヘジャブ(スカーフ)着用問題が、フランスの国家原則「ライシテ(世俗主義)」に新たな挑戦状を突きつけたのは一九八九年秋だった。パリ近郊の中学校で、ヘジャブを被ったまま授業を受けようとしたイスラム教徒の女生徒三人が「ライシテ」を理由に通学を禁止された事件は、国家や社会と宗教との関係に大論争を引き起こした。 フランスの「ライシテ」はフランス革命以来の伝統で、政治、行政、教育など公的な分野はすべて宗教との厳格な分離が求められている。ヘジャブ着用問題もその延長線上に位置しているが、ヘジャブは駄目で、十字架のネックレスなら構わないのか、というかなり根源的な問いかけに行きつく。

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