インテリジェンス・ナウ

拉致日本人「一部帰国」を匂わす北朝鮮の謀略

執筆者:春名幹男 2000年11月号
タグ: 北朝鮮 日本 韓国
エリア: アジア

「大変な騒ぎですよ。これでまた元に戻りましたね……夜も眠れません」 十月下旬、金沢の寺越友枝さんに北朝鮮から電話がかかった。受話器の向こうの声から落胆の様子がうかがえた。友枝さんにそう語ったのは、現在平壌で職業総同盟副委員長を務める息子の武志さん。武志さんは三十七年前、日本海で漁船に乗っていて行方不明になり、近年になって生存が確認された人だ。共同通信金沢支局はそんなニュースを伝えた。「大変な騒ぎ」というのは森喜朗首相がブレア英首相との会談で漏らした、日本人拉致疑惑をめぐる「第三国発見方式」問題のことだ。

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執筆者プロフィール
春名幹男(はるなみきお) 1946年京都市生れ。国際アナリスト、NPO法人インテリジェンス研究所理事。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授、早稲田大学客員教授を歴任。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『米中冷戦と日本』(PHP)、『仮面の日米同盟』(文春新書)などがある。
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