インテリジェンス・ナウ

超高速魚雷スパイ事件に見え隠れする中国の影

執筆者:春名幹男 2001年1月号
エリア: アジア

 昨年末の十二月十四日、モスクワのレフォルトボ・プリズンから、一人のアメリカ人ビジネスマンが釈放された。東西冷戦の終結から十年、米国とロシアの友好的関係にはふさわしくない風景ではあった。 米海軍情報部(ONI)の元要員エドモンド・ポープ氏(五四)。昨年四月、ロシアの海軍技術を買い付けるビジネスに従事していてスパイ容疑で逮捕された。逮捕したのは、旧ソ連国家保安委員会(KGB)解体後の国内部門、連邦保安局(FSB)である。 八カ月ぶりに自由の身になった夫を出迎えたのは妻シェリーさんと一部の関係者だけ。ポープ氏はそのまま、どこにも立ち寄らず、車でシェレメチェボ空港に急行し、小型チャーター機に乗って、ドイツ・フランクフルトの南西約百三十五キロにあるラムスタイン米空軍基地内の病院に収容された。

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執筆者プロフィール
春名幹男(はるなみきお) 1946年京都市生れ。国際アナリスト、NPO法人インテリジェンス研究所理事。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授、早稲田大学客員教授を歴任。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『米中冷戦と日本』(PHP)、『仮面の日米同盟』(文春新書)などがある。
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