リスク管理なき三百七十兆円が金融市場にやってきた―― 郵便貯金、簡易保険、郵便の郵政三事業が民営化に向けて動き出した。小泉純一郎首相が圧倒的な高支持率を背景に、これまで政界ではタブーとされてきた郵政改革に取り組む決意を表明しているからだ。三事業民営化が持論である小泉首相の意向を反映し、郵貯などの経営形態を議論する首相の私的懇談会のメンバーは、多くが民営化論者で占められている。 これまで議論の中心となっていたのは、国が事業を独占している信書配達の民間開放と、郵貯・簡保資金が特殊法人に流れているという二つの論点。議論が煮詰まれば、もう一つの論点である、郵貯・簡保という総額三百七十兆円の資金を扱う巨大金融機関のリスク管理・資金運用体制がどうなっているのか、という問題が浮上してくる可能性が高い。

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