中東の和平は、われわれが生きているうちには成らないだろう。ユダヤvs.パレスチナの抗争は、全世界を破滅へ引きずり込むブラックホールかもしれない。このコラムで、何度もそう書いてきた。 初めてそういう終末観めいたものを抱いたのは三十年前、ところはテルアビブである。一九七二年は暗い事件の多い、人を悲観的にする年だった。 私は浅間山荘落城の当日は東京に戻っていたが、あれは無茶苦茶に寒い軽井沢だった。続く妙義・榛名の連合赤軍事件の現場にも、風花が舞っていた。そして同年五月三十日のテルアビブ空港襲撃事件。直後に現地に着いた私を見る、空港警備員の顔がこわばっていた。さらに、生き残った岡本公三の軍事裁判。

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