お金では計れない価値がある

執筆者:喜文康隆 2002年12月号
タグ: 日本

「人間には自分の自由と不自由とを自覚し分別し煩悩する自由がある」(鈴木大拙『東洋的な見方』)     * 人間の価値を計る尺度はけっしてお金だけではない。このことを痛感させる事件が、一カ月あまりの間に二つ続いた。 主人公の一人は、FA(フリーエージェント)権を行使して読売巨人軍を退団、大リーグ入りを決めた松井秀喜。もう一人はノーベル化学賞を受賞した田中耕一である。滅んだ「池の中の強者」 原辰徳監督の指揮する読売巨人軍が西武ライオンズに四連勝して日本シリーズを制覇してからわずか二日、松井のFA宣言は劇的な環境のなかで行なわれた。松井の大リーグ入りを伝える十一月二日付けのスポーツ紙には「夢貫きメジャー」「裏切り者と思われても」「自ら導入した自由競争に敗れた巨人」という見出しが躍っている。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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