昨年十一月に行なわれたトルコの総選挙で、イスラム主義の流れをくむ公正発展党が過半数を優に超える三百六十三議席(定数五百五十)を獲得し、イスラム政党として初めて単独政権を樹立した。イスラム政党の台頭により、近代トルコの父ケマル・アタチュルク以来の国是である世俗主義が揺らいでいるようにも見える。だが世俗主義とイスラム教への回帰は、必ずしもあちらをとるか、こちらをとるかというゼロ・サム的な対立関係にあるとは限らない。 第一次世界大戦で崩壊したオスマン帝国の後を継いだ現代トルコは、国家の基盤をがらりと変えた。オスマン帝国が統治原理をイスラム教に求めていたのに対し、新生トルコは民族アイデンティティを基礎とした国民国家を目指し、政教分離原則を導入したからである。以来、世俗主義の守護者を自任する軍は、イスラム勢力の政治活動に厳しい監視の目を注いできた。

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