パレスチナ問題を動かす「予期せぬ出来事」

執筆者:ガーション・バスキン 2004年5月号
エリア: 中東

「オスロ合意」も「ロードマップ」も、歴史のゴミの山に埋もれる運命にある。この荒涼たる現実の先に希望はあるのか――[エルサレム発]イスラエルとパレスチナの紛争には、常に二つの相矛盾する真理が存在する。ひとつは、現状――すなわち、二〇〇〇年九月以来続く暴力の連鎖――は変わらないということ。そしてもうひとつは、最大の変化をもたらすのは、往々にして予期せぬ出来事であるということだ。しかし、私自身を含む中東専門家にわかるのは、残念ながら長期的には大した意味をもたない「予測可能な出来事」でしかない。「アルアクサ・インティファーダ」と呼ばれる現在のパレスチナ抵抗運動は、二〇〇〇年九月二十八日に、当時の野党党首だったアリエル・シャロン現イスラエル首相が、アルアクサ・モスクのあるイスラム教の聖地ハラム・アッシャリーフ訪問を強行したことに端を発している。以来四十二カ月の間に、パレスチナ側の発表によれば三千四十五人のパレスチナ人が殺され、三万八千人のパレスチナ人が負傷した。一方、イスラエル側によれば、九百四十二人のイスラエル人が殺され、六千二百八十六人のイスラエル人が負傷した。暴力の連鎖によって失われたのは、双方の人命だけではない。最大の“犠牲者”は、希望と信頼である。

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