タイ新政権――「政治主導」と大企業による支持表明

執筆者:樋泉克夫 2011年9月12日
タグ: 中国 インド タイ
エリア: アジア

 8月10日の発足から1カ月が過ぎた9月10日、タイのインラック首相はブルネイを皮切りにインドネシア、カンボジア、ラオスのASEAN4カ国を初訪問して外交デビューを果たし、政権は試運転段階から本格始動に向け動きだしたようだ。

 この間、新政権のみならずタイの今後を占う意味で興味深い動きがみられた。

 第1が、数年来、過激なタクシン支持運動を展開してきた中央・地方の赤シャツ陣営指導者の多くが8月末に内閣の政治職に任命されたことだ。昨春、彼らがバンコクの繁華街を占拠し流血の事態を招いたことは知られたところだが、積極果断な対応を取れず徒に事態を紛糾させたことが前アピシット政権と国軍への国民的不信感を招き、今回の政権交代をもたらしたとも言われるだけに、「論功行賞人事」と批判する声が起こるのも無理からぬことだろう。

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執筆者プロフィール
樋泉克夫(ひいずみかつお) 愛知県立大学名誉教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年から2017年4月まで愛知大学教授。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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