独大統領辞任の陰にタトゥーあり

執筆者:佐藤伸行 2012年2月20日
エリア: ヨーロッパ

 ドイツのクリスチャン・ウルフ大統領(52)が2月17日、ニーダーザクセン州首相時代に地元財界と癒着していた疑惑にまみれ、とうとう辞任を発表した。就任後、1年8カ月にしての辞任であり、在任期間は戦後の歴代大統領中、最短命となった。

 ドイツの大統領といえば、「過去の克服」を説いたワイツゼッカー元大統領に典型的に見られるように、ナチス犯罪の重い十字架を背負った戦後ドイツの良心を体現する精神的・道徳的指導者と位置づけられてきた。しかし、ウルフ氏の不祥事は、あまりに吝嗇に過ぎ、聞く者を赤面せしめるような内容だった。金銭絡みのスキャンダルによって任期途中で辞任を余儀なくされたドイツの大統領は戦後、初めてであり、2010年の選挙でウルフ氏を擁立したメルケル首相の責任も厳しく追及される事態になっている。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
佐藤伸行(さとうのぶゆき) 追手門学院大学経済学部教授。1960年山形県生れ。85年早稲田大学卒業後、時事通信社入社。90年代はハンブルク支局、ベルリン支局でドイツ統一プロセスとその後のドイツ情勢をカバー。98年から2003年までウィーン支局で旧ユーゴスラビア民族紛争など東欧問題を取材した。06年から09年までワシントン支局勤務を経て編集委員を務め退職。15年より現職。著書に『世界最強の女帝 メルケルの謎』(文春新書)。
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