「重慶の犬は太陽に向かって吠える」と言われるほど、重慶の空はいつも霞がかかっている。犬が太陽を月と間違って吠えるというわけだ。山地にあるため、霧が立ち込めるためでもあるが、その霧にはスモッグが溶け込んでおり、街を歩いていると、肺の隅々にまで霧が浸透するような気がして息苦しくなる。 中国の大河・長江(揚子江)の上流に位置する重慶市の人口は、現在三千百三十万人。もちろん本来の重慶市の周辺地域も含んだ人口だが、目下、拡大中。空気の悪さは昭和三十年代の日本と同様、この街が急速に発展しつつある証拠でもある。

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