逃げ切り図る東電にのしかかる「2兆円融資」の軛

執筆者:安西巧 2013年10月3日
タグ: 安倍晋三 日本
エリア: アジア
 今回は門前払いではなかったが……(泉田・新潟県知事と広瀬・東電社長) (C)時事
今回は門前払いではなかったが……(泉田・新潟県知事と広瀬・東電社長) (C)時事

 瀕死の東京電力にこのところ“朗報”が相次いでいる。福島第1原子力発電所の汚染水漏れは、8月7日に安倍晋三首相(59)が打ち出した「国が前面に」の方針で政府に責任が転嫁され、その汚染水問題の影響で一時は危ぶまれた2020年の東京五輪開催も、9月7日にアルゼンチンのブエノスアイレスで開かれた国際オリンピック委員会(IOC)総会で決定。東電は「敗退原因」の汚名を着せられることを免れ、五輪決定の熱狂で汚染水問題の批判の矛先も鈍った。さらに9月27日には、黒字転換のカギを握っているとされる柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働に向けた安全審査申請にもこぎ着け、経済産業省や東電の幹部の間からは、「ヤマは越えた」と安堵する声さえ漏れてくる。だが、御用マスコミの曇った目はごまかせても、状況を冷静にみれば、懸案が何ひとつ解決していないのは誰が見ても明らかである。

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執筆者プロフィール
安西巧(あんざいたくみ) ジャーナリスト 1959年福岡県北九州市生まれ。1983年早稲田大学政治経済学部政治学科卒、日本経済新聞社入社。主に企業取材の第一線で記者活動。広島支局長、編集委員などを歴任し、2024年フリーに。フォーサイトでは「杜耕次」のペンネームでも執筆。著書に『経団連 落日の財界総本山』『広島はすごい』『マツダとカープ 松田ファミリーの100年史』(以上、新潮社)、『さらば国策産業 電力改革450日の迷走』『ソニー&松下 失われたDNA』『西武争奪 資産2兆円をめぐる攻防』『歴史に学ぶ プロ野球16球団拡大構想』(以上、日本経済新聞出版)など。
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