【ブックハンティング】アメリカ人記者による旧大陸「欧州」発見の書

執筆者:佐藤伸行 2005年9月号
エリア: ヨーロッパ

 近年、国際論壇に巨大なインパクトを与えた米国人の欧州論といえば、ロバート・ケーガンの『楽園と力について』(邦題・ネオコンの論理)が真っ先に思い浮かぶ。ケーガンは、米国がホッブズ的「万人の万人に対する戦い」に身を投じ、覇権への道を切り拓いているのと対照的に、統合欧州は歴史の終わりに出現するカント的永世平和の自己完結的世界に安住しようとしており、欧州はもはや米国のパートナーではないと喝破したのである。『ネオコンの論理』は二年前、イラク戦争を開始したブッシュ政権が内包する独特の世界観を啓示したものとして読む者に戦慄を覚えさせた。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
佐藤伸行(さとうのぶゆき) 追手門学院大学経済学部教授。1960年山形県生れ。85年早稲田大学卒業後、時事通信社入社。90年代はハンブルク支局、ベルリン支局でドイツ統一プロセスとその後のドイツ情勢をカバー。98年から2003年までウィーン支局で旧ユーゴスラビア民族紛争など東欧問題を取材した。06年から09年までワシントン支局勤務を経て編集委員を務め退職。15年より現職。著書に『世界最強の女帝 メルケルの謎』(文春新書)。
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