大国化戦略を押し進めてきたタクシンの政治権力は国王の権威すら脅かしかねないものとなった。タイは国家としての岐路に立っている。「反政府グループの集会が、順調なタイ経済と政府の信頼に悪影響を与えかねない」 退陣要求運動の高まる二月二十四日、こうした理由を挙げてタクシン首相が抜き打ち的に断行した下院解散は、かつてのタイでみられた“お手盛りクーデター”を連想させるものだった。昨年二月の総選挙で下院五百議席中三百七十六議席(現在は三百七十四)を獲得し、一九三二年の立憲革命以来空前の巨大与党となったタイ愛国党を率いるタクシンは、八〇年代半ばまで続いた軍人宰相の姿によく似ている。
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