クリミアへの旅(1)キエフの逆襲はあるか

執筆者:国末憲人 2014年7月15日
エリア: ヨーロッパ

 ウクライナ東部で政府軍と親ロ派勢力との一進一退の攻防が続く中で、ロシアに併合されたクリミア半島について語られる機会がめっきり減った。あたかも、併合で問題が終わってしまったかのようだ。もちろん、併合自体が明らかな国際法違反であるし、これを承認しようとする国もほとんどない。一方で、長引く紛争への疲れからか、欧州の識者の間から「クリミアは仕方ない」と現状を認める発言さえ聞こえるようになった。

 ロシア併合後のクリミア半島はどうなっているのか。5月から6月にかけて、現地を訪れる機会があった。今回の取材の主な目的は、ウクライナからロシアへの国籍変更の実態と影響を調べることで、その一部は7月6日付朝日新聞日曜版GLOBE特集「揺らぐ国籍」で報告したが、その他にもクリミア半島を回り、またこれに先だって首都キエフに立ち寄ってウクライナ大統領選を垣間見た。以下、何度かにわたってその報告をしたい。

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執筆者プロフィール
国末憲人(くにすえのりと) 東京大学先端科学技術研究センター特任教授 1963年岡山県生まれ。85年大阪大学卒業。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。パリ支局長、論説委員、GLOBE編集長、朝日新聞ヨーロッパ総局長などを歴任した。2024年1月より現職。著書に『ロシア・ウクライナ戦争 近景と遠景』(岩波書店)、『ポピュリズム化する世界』(プレジデント社)、『自爆テロリストの正体』『サルコジ』『ミシュラン 三つ星と世界戦略』(いずれも新潮社)、『イラク戦争の深淵』『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『巨大「実験国家」EUは生き残れるのか?』(いずれも草思社)、『ユネスコ「無形文化遺産」』(平凡社)、『テロリストの誕生 イスラム過激派テロの虚像と実像』(草思社)など多数。
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