香港デモ: 北京政府と香港企業家らの「官商治港」という現実

執筆者:樋泉克夫 2014年10月21日
エリア: アジア

 「民主化」を求める多くの学生が香港の主要道路の封鎖に動いた6日前の9月22日、香港の企業家によって組織された総勢70人余の香港工商専業訪京団が、北京で習近平主席の許に向かった。団長は「香港首富」とも「李超人」とも呼ばれる李嘉誠(長江実業集団・和記黄埔集団)、先導役は中華人民共和国全国政治協商会議副主席の董建華(初代香港特別行政区長官)である。

 一行を前に、習近平主席は(1)中央政府は「1国2制度」貫徹の方針と香港基本法を断固として守る。(2)香港で民主法治が推進されることを断固として支持する。(3)香港の長期安定と繁栄は断固として維持する――の「3つの大原則」を語っている。しかし、金融街の中環(セントラル)地区を占拠し香港経済の柱である金融機能をマヒさせようとする学生らによる「占中運動」が現実味を帯びていた時期だけに、香港の「民主化」に対する習近平政権の強い姿勢を内外に示すと同時に、香港の企業家たちの動揺を抑える狙いもあったのだろう。

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執筆者プロフィール
樋泉克夫(ひいずみかつお) 愛知県立大学名誉教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年から2017年4月まで愛知大学教授。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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