沈黙するロシア・メディアの罪と罰

執筆者:名越健郎 2007年2月号
エリア: ヨーロッパ

恐怖政治におののき、若い記者も口をつぐむ。かつてあれほどレベルの高かったロシアのメディアは、いま衰亡の危機に立っている。 旧ソ連時代末期、西側のモスクワ駐在記者にとって水曜日は多忙な一日だった。通常の新聞に加え、改革派のモスクワ・ニュース、アガニョーク、文学新聞といった週刊紙・誌の発行日に当たり、夕方まで新聞、雑誌の転電に追われたものだ。長文の調査報道の信頼性や水準は欧米メディアを圧倒していた。 当時はグラスノスチ(情報公開)の全盛期。新聞・雑誌には、ソ連史の暗部を暴露したり、ソ連の立ち遅れを実証したり、ゴルバチョフとエリツィンの暗闘の舞台裏を活写したり、特ダネ満載だった。

カテゴリ: IT・メディア
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執筆者プロフィール
名越健郎(なごしけんろう) 1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社、外信部、バンコク支局、モスクワ支局、ワシントン支局、外信部長、編集局次長、仙台支社長を歴任。2011年、同社退社。拓殖大学海外事情研究所教授。国際教養大学特任教授を経て、2022年から拓殖大学特任教授。著書に、『秘密資金の戦後政党史』(新潮選書)、『ジョークで読む世界ウラ事情』(日経プレミアシリーズ)、『独裁者プーチン』(文春新書)など。
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