相次いだ「脱北情報」と「韓国総選挙」の関係

執筆者:平井久志 2016年4月15日
エリア: アジア
北朝鮮が海外で運営するレストランから集団で脱出した従業員ら(一部画像処理しています)[韓国統一省提供] (C)時事

 

 韓国統一部は4月8日、海外にある北朝鮮レストランの従業員13人が集団で韓国に亡命したと発表した。13人は男性の支配人1人と女性従業員12人で、同7日にソウルに到着。統一部はレストランのあった国の名前や亡命経路などは、当該国との外交関係を考慮し明らかにできないとし、統一部スポークスマンは13人の亡命の動機は「北朝鮮体制への懐疑や韓国社会への憧憬」とした。
 海外に居住する北朝鮮の人たちが個別に韓国への亡命を求めるケースは過去にもあったが、このようにレストランに勤務する従業員が集団で亡命するというのは極めて異例だ。
 また、韓国の聯合ニュースはその3日後の4月11日午前9時半に「単独ニュース」、すなわち「特ダネ」として、北朝鮮の工作機関「偵察総局」出身の北朝鮮軍大佐が昨年、韓国に亡命していたことが明らかになったと報じた。この報道の直後に、韓国の国防部と統一部は「報道は事実」と聯合ニュースの報道を確認しながら「この人物がどういう人物なのかなど詳細なことは明らかにできない」とした。
 韓国政府が北朝鮮からの亡命者をソウルに着いた翌日に発表するというのは極めて異例であり、北朝鮮の工作機関幹部の韓国亡命を国防部や統一部が確認するというのも極めて異例だ。この背景に何があったのだろうか?

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執筆者プロフィール
平井久志(ひらいひさし) ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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